【4月インタビュー】

  國枝 加誉様

  管理栄養士

  一般社団法人 日本健康食育協会

 

―――――――これまでの経緯を教えてください。

栄養士になりたいと思ったのは、高校生の時に痩せ型の2型糖尿病になったことがきっかけで、食事が本当に大切だと感じたからです。それまでは翻訳家になりたくて、文系まっしぐら。生物や化学には興味がなかったのですが、病気をして人間のメカニズムの緻密さ、栄養学の面白さにどっぷりはまってしまいました。

 病気の予防のためにも、病気をした人が楽しく食事をするためにも、治療食の基礎を学びたいと考えていたので、学生時代から病院に就職したいと決めていました。食事療法が重要になる病気を扱う内科がある病院なら、栄養士の価値を理解してくれるはずだと思い、そのような病院を自分で探して手紙を出しました。病気のこと、当時の病状のこと、患者さんに貢献したいこと……全て手紙に書きましたね。すると、幸運にも面接に呼んでいただき、某大学病院で非常勤職員として就職できることになりました。

 当時、栄養士の多くは献立作成などの作業を地下で行うことが多くありました。ちょうど就職先で病棟専任栄養士を配置しようする試みがあり、そちらに関わらせていただくことになりました。仕事内容はベッド訪問、個人指導、集団栄養指導が中心で、さまざまな媒体作成も行いました。ただ、当時の上司から「献立作成が出来ないと一人前にはなれない」と常に言われていました。卒業して間もない立場で貴重な経験をさせていただいたのですが、常勤の管理栄養士として働きたかったこと、献立作成の経験を積みたかったこともあり、在職期間1年と少しで、別の病院に転職しました。しかし、そこでうまくいかず、病院栄養士の道からドロップアウトしてしまったのです。

 その後は、知人の紹介で個人塾の講師や、学生時代にバイトしていたテレビショッピングのコールセンターでの仕事(スーパーバイザーからオペレーターの教育係まで)、外食でのメニュー開発、コラム執筆などに携わりました。こんなふうに、実は私は転職が多く、栄養士以外の仕事をしていた期間が長いんです。でも、気がつくと、どの場面でも食や健康・医療に関わる業務をしていました。さらに、ベンチャー企業への転職、野菜ソムリエ講師などを経験し、柏原幸代さん(一般社団法人日本健康食育協会 代表理事)からお声がけいただき、現在の仕事に就くことになりました。

 日本健康食育協会では、健康・食育マスター講座の事務局運営や講師、イベントの企画運営から事務作業まで、幅広く仕事をしています。組織で働くにあたり、直接売り上げに貢献する仕事、間接的に貢献する仕事(売り上げに関わる人を応援する仕事)がありますが、私はこれまで後者を多く経験してきました。一見バラバラに見えるフィールドでの経験すべてが、いまの仕事に不思議とつながっているように感じられ、このためにたくさん回り道をしてきたのだな、経験してきてムダなことはひとつもないな、と感じています。

 私が思うのは、病院などの栄養士がいる王道の仕事だけでなく、どこにでも栄養士の仕事はあるということです。絶対にないだろうというところでも、作れば栄養士の仕事はあると思います。ただ、稼ぐということは決して簡単ではない。だから、状況によっては、稼ぐための仕事をやりつつ空いた時間に栄養士の仕事をやるのも良いと思います。どちらにしても、時間と労力を注ぐ覚悟が必要です。社会に対して自分が何をすることで貢献していきたいか、自己実現をしていきたいか、きちんと決める必要はありますね。

 

 

―――――――将来の夢を教えてください。 

 言葉を選ばずに言えば、私は、栄養士のいらない世界になってほしいと思っています。つまり、栄養士がいなくても、自分の健康を気遣って、楽しく食事をして、病気を予防していける世の中ですね。ひとりひとりが健康を作り出すことを応援していくために栄養士は必要だと思いますが、いつまでも、栄養士がいないと病気がなくならない、という世界ではいけないと考えています。

これからやりたいことは、小難しい栄養学を日常に溶けこませることです。栄養学とまではいかなくても人が健康になるために必要なことを、わざわざ栄養指導の時間を設けなくても、些細なことでも日常の中で投げかけられるようにしていきたいですね。いくら体に良いことでもやっぱり楽しくないと実践できないので・・・。講演会や教室の開催など、「栄養を日常に浸透させるための仕事」を作っていきたいです。食・栄養・健康の知識を噛み砕きながらさりげなく言える環境と、そういうことを言えるスキルを持った人を増やしていく、マネジメントしていくことが私の目標です。

―――――――1日のスケジュールを教えてください。

平日  6:00  起床・・・朝に弱いのでスヌーズをかけまくります・・・()

           食事

           洗濯・・・夜やるよりも朝の短時間で終わらせます

           お弁当作り・・・夜につくっておくこともあります

     9:00 ~ 18:00

         仕事(日本健康食育協会の仕事、野菜ソムリエ講義の登壇など)    

 

 

―――――――休日何もご予定がないとしたら?

料理をしたいです。昔は全然やっておらず、最近実家の母親に「いったいどうしたの?」と驚かれるほど料理をするようになりました。自炊は体にもお財布にもいいことばかりです。自分が食べるので美味くできないと嫌なので、数をこなして上手くなりたい。だから、空いた時間にはできるだけ料理をするようにがんばっています。

料理以外では、美術館やイベントなどによく出かけています。運動は苦手なのでスポーツをする機会があまりないのですが、その分出かけて歩き回るようにしています。

 

―――――――Facebookに料理写真をあげていらっしゃいますよね?

成功してうまく撮れた写真だけあげているんですよ(笑)

よく料理するようになって思うのは、舌だけでなく巷の情報にも敏感になるということです。なるべく添加物が少ない良質な食べものを選ぶようにしていますが、一般の人はみんながみんなそうではないので。今何が流行っているか、一人暮らしの人や忙しい人に便利なものはないか、など、スーパーに行くことで情報収集ができるのでおもしろいです。

自分が料理やると仕事にプラスになることがたくさんあります。学生の頃の自分に「もっと料理ちゃんとやっときなさいよ!」と言いたいですね(笑)学生さんにはぜひ今のうちに、本格的でなくても日々料理に取り組んでほしいです。苦手でも不器用でも、その中でできるレシピや献立は、料理が苦手な人にアドバイスする時にとても参考になります。料理をして損なことは全くないので。絶対にやった方が良いです!

他にも、良いものをたくさん食べてほしいです。学生でも、年に1回、誕生日の日やクリスマスの日に、本格的で丁寧な料理を食べてもらいたいです。食べなくても写真をみることでも、料理の写真や盛り付けなど、良質なものを若いうちにたくさん見ることは目も肥えるので……みんなにぜひやってもらいたいですね。

 

私自身、学生時代は調理実習の下処理と盛り付けが好きでした。調理実習で”風邪をひいたときの料理”というテーマで、おかゆや果物切って出す課題がありました。私は普通にリンゴを切って出すのが嫌で、最後に皮を星などに切ってお皿に並べたのですが、すると、「これを見ると体の弱っている人はすごく元気が出るわね」と先生にほめられたことがあって。ただそれだけですが、自分が見ておいしそうだと思うことって、すごく大事だと実感しました。

  “おいしい”にもいろんな理由があって、適温だからとか、香りがいいとか、そういうことをたくさん知っていれば知っているほど、栄養士はおいしい食事を出すことができます。病院のご飯がまずいって言われると悲しいですよね?でもそれは、私たちが理想とする栄養や味付けのバランスと、患者さんが毎日食べておいしいものとのギャップがありすぎるからだと思うんです。特に塩分は、普段味の濃いものを食べすぎている人も多い。最近は病院のご飯もおいしいと言われるようになってきました。普段のみんなの食事が、薄味で健康的になってきているからだと思います。

 

―――――――オススメの本は何ですか?

栄養士は一生食と向き合い、一生勉強する資格です。まずは自分が食に向き合う姿勢を、食事で素直に感動することで確立してほしい。頭でっかちにならず、心を動かして人を健康にしてほしいです。栄養士を目指す人達に読んでほしい本はたくさんありますが、その中でも辰巳芳子さんの本が大好きです。いろんな本を出されていますが、その中でもオススメなのが、この三冊です。

 

あなたのために―いのちを支えるスープ』(文化出版局)

有名な本です。余命いくばくもない方に丁寧に作って差し上げることが「いのちのスープ」の目的。食は生きることだと思い知らされ、背筋が伸びます。

 

手しおにかけた私の料理』(婦人之友社 

四季を通した基本的な和食レシピ。日本で栄養士として活動する以上、和食の基本をちゃんと知っていることが重要だと思います。

 

食といのち』(文藝春秋)

著者がお医者さんやいろんな方と対談され、食が生きることにつながることを実感させてくれる本です。これからの医療は病院だけでなく在宅にも広がります。臨床や公衆などの分野を超えて、食と健康に関わる人すべてが読むべき本だと思います。

 

あと、ぜひ紹介したいのがこちらの本です。

『管理栄養士のキャリアデザイン』田中浩子・田中幸恵(化学同人)

 私がmixiで栄養士さん向けのコミュニティーの管理人をやっていた頃、大学の先輩がその様子を見られて、「この本の制作を手伝ってほしい」とお声がけくださいました。全部ではありませんが、Nのみんなみたいに、活躍されている栄養士にインタビューをして記事を書きました。病院の栄養士さんから起業した人まで載っています(実は私自身も……)。書く仕事って面白いな、と思うきっかけになった、大切な本です。 

 

 

 他にも、なんでも良いので、料理本やきれいな写真の本をみんなに読んでほしいです。その料理を作りなさいという意味ではなく、香り、食感、色合い、盛り付けなどを参考にしてほしい。とても勉強になります。プロの料理人はかなり時間と労力をかけて工夫されているので、その工夫のなぜ?を掘り下げてみるといいかもしれませんね。自分が作る時にもこんな工夫を真似てみようとか。何事も模倣からで良いと思います。

 

―――――――オススメのレストランを教えてください。

恵比寿 『わたりがらす

自然派ワインのお店で、ワインだけじゃなく、生搾りのオレンジジュースなどもあります。食材にとてもこだわっていて、いろんな生産者さんとシェフが直接つながっておられます。学生さんには高めかもしれないけど、丁寧でおいしいのでオススメです。ランチもやっているので是非行ってみてください。

 

恵比寿 『雨後晴

金目の煮付けや酒蒸しがとってもおいしいです。最近青山にも支店を出されました。ここもちょっと大人向けかもしれませんが、器がとても素敵なので盛り付けも勉強になりますよ。

 

【インタビューを終えて】

 とても楽しいインタビューで、あっという間に時間が過ぎていきました。 

貴重なお話を、記事に載せた以外にもたくさんしていただきました。全部載せられないのが残念です。

とても気さくで素敵な方でした!

私も國枝さんのようにしっかり芯をもった管理栄養士になれるよう努力していきたいです。

お忙しい中、ありがとうございました。(太田代) 

 

記事 篠原・草野・太田代